第2章 新たなる出会い
リクオは自分の姿を水面に映しだすと、紫苑にも水面をのぞきこませた。
岩に座るようにして、身を乗り出して覗き込む紫苑。
「見ろ。俺とおまえは同じ目をしてる。どの姿になってもその目だけは変わらなかった。これで、充分だろう。」
リクオはそれだけ言うと紫苑に背を向け、木の下に座り込んだ。
紫苑は小さく笑うと、同じようにして隣に腰を下ろす。
「…リクオの畏れって何?」
ふいに紫苑が問いかけると、少々驚いたように目を開くリクオと目があった。
「俺の、畏れ?」
「ええ。あなたは私を奴良組の若頭として認めてくれた。もし、たがいに飲み込まれたら大変でしょう?」
「俺とおまえが同じ血を持つ者同士なら畏れも同じ類だろう。」
「バカね。違うわよ。確かに似てるかと問われれば似てると答えるでしょう。でも、多少の違いはあるのよ。私の畏れは、目の前に見ている者を信じ込んでしまえば永遠にその中に取り込まれる。もう一つが、」
「相手に自分の畏れで圧倒させ、自分の姿を見えなくしたり、存在を大きく見せる。」
紫苑が言う前にリクオがさらりと言い切った。声を出す代わりにリクオの横顔をじっと見つめる。
「わかってるはずだぜ。俺とおまえは同じだと。俺にお前の畏れは通じねぇし、お前に俺の畏れは通じねぇ。分かってるだろ。」
「そうかしら?ま、勝負してみないとわからないけど、怒られそうね…」