第1章 巻き戻しの街
細い脇道を出ると、何軒もの家が並ぶ通りに出た。
もう遅い時間になるからか、人っ子一人いない。
「…って、二人ともどこだろう。無線なんて持ってないし、ゴーレムも忘れてきたし、どうやって連絡取るんだろう」
今更気付いたけど、本当にどうするんだろう。
「はあ…。手がかりも二人も見つからなかったら、今日は野宿かな〜」
運悪く財布もないし。団服着てれば、公共施設とか公共機関はだいたい無料で使えるから、財布を持つ習慣がなくなってきた。
「今日はついてないな」
転がっていた石ころを蹴りながら、とぼとぼと歩く。
って、ここどこだろう。まさか迷った?
辺りを見渡すと本当に真っ暗になっていた。
街灯もポツリポツリにしかついてない。
うそでしょ…
「うわーん。ついてなさすぎだよー!」
「ああああなた!さっきの?!」
「え?」
いきなり後ろから声がしたので振り向くと、すごい勢いでこっちに誰かがやってきていた。
「あなたさっき私を変なのから守ってくれた人?!」
「うわわわわ!」
勢い良くしがみつかれて、尻餅をついた。
のし掛かって来たのは女性だった。目の周りのクマがひどい。
…ちょっとおばkーーげふんげふん
にも、まあ、見えなくないくらい怖い。
「なんですか?!誰ですか?!」
「さっきは助かったわ!!私、本当に自殺しようかと思っていたのよおおお」
「うわああああ」
ついには泣き付かれた。
って怖い怖い怖い!!!
さっきから何言ってるのこの人!!
「あの、落ち着いてください!何があったんですか?」
そう言うとパッと顔を上げた。
真っ白くやつれた顔には、涙と鼻水が垂れていた。
「…あなた、さっきの人?」
ずいっと顔を近づけられて、とっさに仰け反る。ひいぃぃ…。
「…あの、さっきの人ではないかもしれないですけど、たぶん私の友達です…その、さっきの人?」
彼女が誰のことを言ってるのかわからないけど…。
もし私の着てる服で判断したのなら、彼女の言ってるさっきの人はたぶんリナリーかアレン。
「何かあったんですね?話聞かせてください」
とりあえず彼女を立たせて、タオルを渡した。
それで彼女は鼻水を拭くと、少し落ち着いたらしい。
「取り乱してごめんなさい。お話聞いてくださる?もう遅いから良かったら、私の家へ来ない?」