第1章 巻き戻しの街
「おはよう、ミランダ」
「あれ、私...?」
「やっぱりあの時計が原因みたいだね」
さっき起こった出来事を簡潔に話した。
あの時計がこの町の時間を吸っていること。ほんの数分で朝日が昇って、時間が巻き戻ったこと。
「あのこが原因...」
「やっぱりイノセンスなのかも、あの時計」
「イノセンス?」
「私たちが集めてる大事なもの。ねえ、ミランダ。きっと私たちならあなたを救える。私の仲間を一緒に探しに行こう」
ええ、と珍しく笑顔を見せてくれたミランダはすぐに身支度を始めた。
昨日彼女が黒服を見た場所へと連れて行ってくれるらしい。
少しでも前を向いてくれたみたいでほっとした。
早くアレンとリナリーを見つけてこの話をしよう。
アクマがこの街にいるってことは、きっとミランダもこの街の人も危ない。
何か危険なことが起きる前に早くイノセンスを回収して、奇怪を解決しよう。
「昨日、バケモノに襲われたのはこの辺よ」
ミランダが連れてきてくれたのは路地裏。
どうしてこんな所を昨日歩いてたんだろう。
「うーん。この近くにはいないみたいだね。じゃあ次は街をー。...ミランダ?」
さっきまで隣にいたはずの彼女が見当たらない。
まさかアクマに?
いや、待って。本当に笑えないぞ、この状況。
「あーもう!」
ミランダから目を離した自分にイラつきながら足を街へとむけた。
アクマ絡みなら本当に笑えない。
早くミランダを。
急いで彼女を探しに走り出した。
その数分後、こんな心配は無用だったことに気付くのだけど。