第1章 巻き戻しの街
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「なんか、コムイさん疲れてたね?」
任務内容を説明してたときのコムイさんを思い出した。
科学班が働き詰めで疲れてるのは知っているけど、あれはなんていうか…
「元気なかったですよね」
そうそう。元気がなかったのが正しいかも。
「やっぱりアレンもそう思った?」
「はい。何となくですけど」
リナリーが長い睫毛を伏せた。少し考えるようなそぶり。
「なんか兄さん…色々、心配してて働き詰めみたい」
心配って…
「リナリーの?」
「伯爵の!」
あ、アレンが怒られた。まあ私も同じこと思ってたけど、黙っておこう…。
「最近、伯爵の動向がまったく読めないらしいのよ。嵐の前の静けさみたいだって、ピリピリしてて…」
伯爵の…。
「それは、何かよくないことが起きるかもってこと?」
「そうみたい。何かはわからないんだけどね。頻繁に街を荒らしてたアクマや伯爵が、最近はどうも大人しいらしくて…」
「伯爵が…」
そう言われてみればそうかもしれない。
少し前は、毎日のようにイノセンスがあるわけでもない場所で、アクマが暴れていた。
でもここ二ヶ月くらいの任務はほとんど、イノセンスの回収だった。
ただのアクマ退治の任務の数は減っている。
「嫌な感じがしますね…」
不安だ、という表情をするアレン。
このまま何もなければ一番いいけど…
「…そうね。もうすぐ着くわ。降りる準備しましょう」
リナリーに促されて、荷物の整理をした。
ーーーガタンガタン
窓の外は相変わらず、綺麗な町並みが広がっていた。