第1章 音駒高校の猫。
視点 黒尾
アイツが、冬華が部活に来ない。
今何時だと思ってんだよ……マネージャーなんだしドリンクとか準備しなくちゃ……あ。
そういえば冬華、今日研磨に薬貰ってたよな?
だったら今頃保健室でぐっすりか…だから研磨がドリンクつくってんのか……
「今日冬華来れねぇから、タオルとドリンクは俺達で用意すんぞ〜」
言わなきゃ分かんねぇしな。
まぁでもこれが初めてじゃねぇしドリンクがいつもより少し不味くなるだけだ、うん。
「クロ、なんで知ってるの……」
「冬華から聞いたんだ」
「帰りは研磨がおぶってけよー?」
「……わかってる」
お姉ちゃんの為なら無償で働きます、かよ。
これが冬華じゃなかったら研磨だったら、クロお願いとか言われるな。
でも研磨は昔から姉ちゃん大好きっ子だったし俺と冬華で遊ぶと必ず後ろについてまわってたっけ。
「おい黒尾、なにぼーっとつったってんだよ」
「えー、昔のことを思い出してたんだよ」
「冬華いないんだから、動けよな」
「へーい」
夜久は容赦ない。
俺も女だったら優しく扱われてたんだろうな、でもチビって言った瞬間蹴っ飛ばされるのは変わんねぇよな。
「大好きな冬華がいないと寂しいか?」
俺の隣で夜久がそんなことを呟いた。
なんでそんなこと言うんだよ、そんな言い方したら俺が冬華のこと好きみたいじゃねぇか。
「何言ってんだよ、それは夜久だろ〜」
なんて、返してみたけど。
案外間違ってはない、でもまだ気づきたくないんだ。
まだ、幼馴染みでいたい。