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不眠症。

第1章 音駒高校の猫。




気づくと朝になってる。
今日も全然眠れなかった……
目を閉じても暖かくしても、眠れない。

読書をするわけでもなく、ゲームをするわけでもない。
ただぼーっと寝っ転がりながら眠気が来るのを待つ。
それだけ。


こんな事を話すと大抵の子は驚く。
でもまぁクマ見れば一目瞭然か、寝てないのすぐわかるよね。


「冬華、研磨来てるぞ」


『今行く』


研磨が3年の教室に来るなんて珍しい。
なにか忘れ物でもしたのかな、貸せるものなら良いけど。


『どうしたの?』


「これ、母さんが冬華にって」


『なにこれ』


「新しい薬じゃないの?」


『あー、前の薬より強いのかな』


「強いんじゃないの、じゃなきゃ寝れないでしょ」


『あんまり強いの嫌なんだよね』


「しょうがないよ」


私が不眠症になって間もない頃は薬で寝るのは本当に嫌だった。
自分は人より寝るのがヘタクソだから薬を使ってるって考えると飲みたくなくなった。
でも飲まなかったら倒れるから飲んで寝る。
これは研磨と私の約束。


『ありがとう、保健室で飲むね』


「うん、ちゃんと寝れるといいね」


そう言うと階段の方へ歩いていく弟。
家で渡せばいいのにわざわざ渡しに来ちゃうところ本当に可愛い。


「なんだったんだ?」


『クロ近い、ただの薬』


「ま、まさか薬中?!」


『睡眠薬、保健室行ってくるから先生に言っといて』


クロは知ってるくせに。
私が不眠症ってこと、なのに知らないふりをする。
なんでかは知らないけど知らないふりされる方がなんか楽かも。









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