第1章 *くるぶし*
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私は心の中でガッツポーズを決める。何故か?それは見事に実行委員のくじを引かなかったからだ。こんな幸運なことはない。
運動が苦手で嫌いな私にとっては、体育祭なんてあってはならないものに過ぎない。正直言えば、かなり休みたい。それが本音になってしまう。
よっしゃー!と言う男子の声や同じように外れたことに喜ぶ女子の声。私はもう関係ない、と自分の席に戻ろうとすると、数人の女子に囲まれたキツイ系女子の代表格とも言える、少し焦った顔をしま山名と目が合ってしまった。
ヤバい、と思ったのも束の間、私の腕は山名にガッシリ掴まれる。
標的を見つけた、と言わんばかりのその目は恐怖にしか過ぎない。きっと、実行委員のくじを引いてしまったのだろう。普通ならどんまい、と言うところだが今は違う。
「早くっ、かして!」
バッと、私の手にあった外れのくじを引き抜き、私に実行委員のくじを押し当てる。誰かにバレたらまずいと、相当焦っていたようで、私にはなんの説明もなしにその外れのくじを奪っていった。
勿論、私が反論できるはずもなく、私は呆然と立ち尽くすことしか出来ない。まさかとは思っていたが、こんなことになってしまうとは……
悔しい、けど、私はそういう立ち位置だから。無理して反論して、いじめの標的なんかにされたらたまったもんじゃない。そんなことになるくらいなら、黙って…やればいいんだ。
『っ……』
教室に戻ってきた尾口先生に私はその実行委員のあたりのくじを差し出す。いちいち言わなくてもいいというのに、尾口先生は実行委員はさんに決まりましたー!なんて元気に言う。
きっと山名は、それを後ろの方でクスクス笑って傍観しているんだろう。そう思うと、物凄く腹が立った。
そして、尾口先生は男子が集まっている方に足を進める、男子の方も無事誰かがあたりを引いたようだ。と言っても、私はあまり興味がなかったが。
「男子は決まった〜?」
ひょっこり覗き込む尾口先生、そして男子のわだかまりの中からすらりと手が伸びる。
「あっ、はい」
そう言って、教卓の前に出てきたのは、クラスの中、いやこの学校の中でも人気を争うイケメン男子、玉森裕太だった。
その瞬間、女子のなんとも言えない悲鳴のようなものがクラスに響いた。
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