第1章 *くるぶし*
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そうすると、玉森くんは私の前にあったプリントを1枚手にとって、ペンケースから取り出したシャーペンで何やら真剣な顔でかいていく。
一体何をかいているんだろうか、と私がそっと拝見してみようとした瞬間、かき終えた玉森くんは、ほら見てと私に裏返されたプリントを差し出した。
もしかして悪口とか書かれてるんじゃないか…と勝手に思っていた私はただのバカで、そこには玉森くんが描いたのであろうラッコ?の絵があった。
「それ、何に見える?」
『え゛っ…えと…ラッコ…?』
突然すぎる玉森くんの質問に、私は印象を持ったそのままの正直な答えを出す。すると玉森くんはちょっと悲しそうな顔をした。
そんな顔をされたらたまったもんじゃない、私は急いでさっきの自分の発言を撤回しようとするが、それを玉森くんの笑い声でかき消される。
「うふふ、それねー、カワウソ」
カ、カワウソ?
私はもう1度、玉森くんが描いた絵をじっと見る。いや、確かに形はそれに見えなくも…ないけど、結構難しいぞ……?
意外にもコロコロ変わる玉森くんの表情と話し方に少し戸惑いながらも、私はそうなんですか…と返事を返す。
だからね、と玉森くんは話を続ける。
「俺もさんと同じ」
私は言葉が詰まった。何て言ったらいいかわからなかったから。こんな綺麗な目をしているなんて、聞いていない。それに、私の名前…知ってくれてるんだ、凄い。嬉しい。
ハッ、と自分の頭の中の言葉をすぐ様かき消す。何を考えてるんだ…私は!!男子との関わりがなさすぎて頭やられちゃった人の末期だよ!!どこの少女マンガっ…
私が1人悶えているのも、見事に気付かなかった玉森くんは前に使われた体育祭のポスターを手に取った。
「……さんって、優しいんだね」
え、と素の私のスッとぼけた声を出してしまう。だって、いきなりこんなイケメンにそんなこと言われたら…誰でもこうなる…!!
その外から注がれた夕日のサンセットがあたる優しい表情に、私は何て答えればいいのかわからなかった。何て答えればいい、わからない。
私が優しいって…なに?
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