第6章 雄英体育祭
「やっ。心操くん。お疲れ様」
そう声をかけると早速舌打ちをかます心操くん。なによ…ちょっと傷つくじゃないの。
「そんな嫌そうな顔、しなくてもいいんじゃない? ほら、スマイルスマイル!」
ほれほれーと心操くんの表情筋を柔らかくしてあげてると、めちゃめちゃ嫌そうな顔で払われた。
「…随分とあっけらかんとしてるんだな。悔しくないのか? あっさりとトップから脱落して4位とは。無様だと恥ずかしくないのか?」
早速毒舌を発揮する心操くん。…いや、これは次の種目の下準備と言ったところか?私はそれには答えずニコッと笑い、彼の頬に付いた土を拭った。
「おい! お前、普通科のやつだよな。A組に宣戦布告してた! 俺の彼女に何の用だ!」
突然、私と心操くんの間に入った男の人。……誰だっけ。一瞬考えて、そして思い出した。
「…西園寺くん!」
私はそういえば、今はこのターゲットと付き合っていたことを思い出し、彼の腕に思いっきり抱きついた。
「見ててくれた? 私、頑張ったんだけど…」
「もちろんだ。さすが俺の彼女になった女だ」
とかなんとか言ってるが、確か西園寺は予選外だった。元々、コネでヒーロー科に入ろうとしたところ、それが通用しないとわかり、B組に入ったらしい。まぁ妥当な成績か。
「…噂道理の尻軽だな」
まだ下準備を諦めきれていない心操くんは、そう私を煽った。周りがザワザワとし始める。
「予選すら通過してねぇ男に媚びても意味ねぇだろ。…あぁ、そいつの家が金持ちだから近づいたの……」
「このやろ……」
私は西園寺くんを制し、心操くんの前に立った。心操くんがニヤリと笑う。私は口を開いた。
「そっか。西園寺くん、予選落ちちゃったのか。じゃあ、別れよっか」
「………は?」