第6章 雄英体育祭
~別side~
「お…おい。なんだあの子…圧倒的じゃんか」
一次予選だというのに、会場はザワザワと騒ぎと興奮を見せていた。いきなり現れた新星の少女。2位で走っている少年の凄さが現れてくると同時に、その前を走っている彼女も浮き彫りになってくる。
「個性自体の強さや素の身体能力は、2位のやつの方がすげぇが……あの子、それを踏まえた上で距離を多めに取ってんだ。すげぇよ。判断能力がずば抜けて高ぇ」
「だが、2位のやつがどんどん距離を縮めて行ってるぞ。ありゃすぐ追いつかれるな」
「そりゃあそうだろ。いくら小細工をしたって、相手はあのフレイムヒーロー エンデヴァーの息子さんだよ」
「あぁ…道理で…オールマイトに次ぐトップ2の血か…」
そのなかで、男は1人その光景を後ろの席から見ていた。その屈強な体に爛々と光る目は、段々と距離を縮める2番手で走る少年に向けられていた。彼から燃え上がる炎がゆらゆらと揺れる。
「やはりお前は俺の子だ。どんなにお前が否定しても…な」
そう呟くと、男は表情を変え、今度は先頭を走る少女へと目を向けた。
「………まさか…お前の子がヒーローを目指すとはな…」
少しばかり憂いた顔をする男だったが、最終関門で少年が先頭へと出ると再び目を爛々とさせるのだった。