第6章 雄英体育祭
「雄英体育祭!ヒーローの卵たちが我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!どうせてめーらアレだろこいつらだろ!?ヴィランの襲撃を受けたにも拘わらず、鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!ヒーロー科!1年!A組だろぉぉ!?」
相変わらず意味が掴めないアナウンスに連れられ、私達は入場した。目が眩むほどの大勢の人たちや歓声が、私たちを興奮した様子で迎え入れてくれる。その期待は全力で緊張している者たちにとって息がつかえて仕方がないのだろう。
「わああああ…人がすんごい……」
先程までの威勢はどこへやら…緑谷くんが顔を引き攣らせながらそう言った。後ろにいた私は、思いっきり彼の背中を叩いた。
「それだけ私たちに期待してるってことでしょ! 緑谷くん、頑張ろう!」
「……犬猫山さん…」
一瞬、昔のように名前を呼ぼうとした緑谷くん。あれ以来、私が逃げるように体調不良で休んだので、彼らとは会話を交わしていない。私は躊躇するように私を見る彼に、笑みを浮かべた。
「緑谷くん、1番取るんでしょ? だったら、もっと堂々としてないと。ね?」
「……っ! う、うん!!」
ほどよくいい顔になった緑谷くんに、私はでも…と不敵な笑いを見せる。
「まぁ、でも…1番になるのは私だけどね」
そういう私の顔を見て、緑谷くんは驚いたように目を見開き、何かを言おうと口を開きかけた。しかし、ちょうど各クラスが整列し終え、主審のミッドナイト先生が鞭を振ったので、私たちの会話はそれで終わり。
「選手代表!1–A爆豪勝己!」
緑谷くんの隣から、爆豪くんが出てきて、不良丸出しの歩き方で進む。…本当に入試1位には見えないな。だが…彼はああ見えて、頭がキレるタイプだということは黒霧さんの件で了解済み。さらには、緑谷くん同様私の過去を知っていることもあり、要注意人物の1人だろう。不意に選手宣誓する彼と目が合った気がした。
「せんせー」
その時、ふと切島くんが苦虫を噛み潰したような顔をする。どうしたの?そう聞く前に、爆豪が次の言葉を発し、そして切島くんが予想的中だと叫ぶ。
「俺が1位になる」
この火種男…なにも体育祭が始まる直前に余計な敵を作らなくてもいいだろうに。轟や緑谷に感化されたのか。それとも、私もそれに乗ってしまったことにより彼のプライドが刺激されたのか。まぁ、分からないが、私は私で忙しい