第2章 雄英に合格
爆豪を別に気にすることも無く、私はクロシロたちのご飯を買って、その帰り道を歩いていた。
『 痛い……ううっ……痛いよ……』
ふと聞こえてきたのは助けを求める声だった。それはすぐ曲がったところの路地裏から聞こえてきた。私は袋を抱えて走った。これが人だったら普通に無視するところなんだけど、相手が動物だったら話は別だ。
「……あぁ?邪魔すんなよおっさん!」
そこにいたのは3人の男と、傷だらけの猫を抱えた病人だった。その体は内臓の一部が喪失しているかのように細かった。そんな病人は、自分より体が大きい男達に臆さず、凛とした声で言った。
「やめたまえ君たち。こんな猫ちゃんに暴力を振って何になるというのだ」
「ああ!?説教かよ!! そこにいるのがわりぃんだろ!!」
何やら病人に殴りかかりそうな勢いの男達。
『 ううっ…痛いよ。怖いよ……』
猫のその言葉を聞いて、気づけば私は病人の腕から猫を奪っていた。猫は温かく、かたかたと震えていた。
「きっ、きみ!危ないから下がって……」
『 …………………あったかい』
優しく撫でてやるとペロッと弱々しく舐める猫。そのまま目を閉じた。
「おいおい、可愛いお嬢さん。お前みたいなのがこんな所にいて、悪いお兄さんに恥ずかしいことされても知らないよ」
「………そう。じゃあ、そんな悪いお兄さん達だったら、怖い目にあっても仕方がないって思うよね」
「は?」
パチンパチン。私は指を2回鳴らした。すると路地裏の奥、ゴミ箱の中、そして屋根からたくさんの光る目が男達に降り注ぐ。
「……な……なに……」
私はヒュっと口笛を吹いた。その途端、多くの野良猫が彼らとの距離をどんどん縮めていく。男達はその光景に恐れながらも、前からも後ろからも、そして上からも来る猫達に逃げ場はなく、まさに袋のネズミの状態だった。
「………可愛いお嬢さんじゃなくて申し訳ないけど、どうする?」
私は彼らに話しかけた。別にそのまま襲わせても良かったんだけど、何分目撃者がいる。下手な行動は取れないのが辛い。
「ひっ………ひいいいいい!!!!」
逃げ場を作ってあげると男達はダッシュで逃げていったのだった。