第6章 雄英体育祭
そして、雄英体育祭まであと1週間となった朝、私にある一通の手紙が届いた。
「……ヒーロー殺し?」
私は大きな欠伸をひとつして、クロシロにご飯をあげると、手紙に目を通した。
「ふーん…偽物の粛清…行き過ぎた思想……ただのヒーロー好きな変態じゃん」
「しかし、彼を利用しない手はありません。彼は実に都合がいい」
「っ!?!?」
突然黒い靄が現れ、私は思わず身構えた。この人…本当に急に、どこでも現れるな!!
「やぁ、犬猫山夜蝶。久しいですね。元気にしていましたか?」
私をおちょくるように、黒霧さんがクスクスと笑う。私は顔を引き攣らせながら、近くにあったリンゴを彼に投げつけた。
「おや? 死柄木に贈り物ですか?」
どうなったらそのような考えに至るのだろう…私は諦めて首を振った。
「……それで、うら若き女子高生の部屋にいきなり現れて何のご用です? ヒーロー殺しの件は手紙で事足りるのでは?」
すると、黒霧さんは答えた。
「脳無の新作ができまして、そのご報告に伺いました。それと…あのオールマイトに似た個性の子供……緑谷出久…でしたか…。少し気になってましてね」
私は緑谷くんの名が出た時、ため息をつきたくなった。…やはり目をつけられたか。私は無邪気なもじゃもじゃの髪の少年の顔がたてらりと頭を過った。
「…そうですか。確かに、彼はあまりにもオールマイトの個性に酷似しすぎてますからね。しかし、私は既にターゲットに接触中ですから、急には無理ですよ。体育祭もありますし…」
「彼の報告をお願いします。それでは、そろそろ死柄木が起床する頃なので、わたしはこれで失礼します。体育祭中にまた連絡しますね」
ポンっと携帯を渡すと、黒霧さんは消えてしまった。…本当に黒霧さん、自由な家政婦さんと化してるな。