第6章 雄英体育祭
思わずクロシロの撫でる手が止まり、私は彼の顔を見た。実技試験…あのロボットたちを倒してポイントを稼ぐあの試験に彼もいたのか…。あの時の私は、試験に受かるのに必死だった。どんなに筆記がよくても、実技試験が0では意味がないから。なるべく目立たないようには気をつけていたが、覚えているものがいたとは想定外だった。……まぁ、だからどうということでもないが。
「そうだったんだ。ごめん。私あの時、試験に必死で周り見てなくて…」
「なんだこいつって思った」
私の言葉を被せ、心操くんは真っ直ぐ私を見てそういった。影が宿っていると思ったその瞳の真っ直ぐさに、私は少したじろいでしまう。心操くんはそんな私の様子を気にせず、饒舌に話し始める。
「目立つ容姿のくせにお遊びみたいな個性持ってて、雄英なんて軽い気持ちで受験してるもんだと思った。こっちは最後の機会のつもりで受けてんのに、ふざけんなよって俺はあんたが心底気に入らなかった。なんで、あんたみたいな奴が雄英のヒーロー科なんて受けたんだって思った。あんな全然大したことない個性のくせに…」
酷い言われようだ。私は苦笑してそれを聞いていた。ふと、膝の上にいるクロシロが唸るのを止めているのに気づいた。