第6章 雄英体育祭
「それで?私に何か用かな。心操くん」
普通科の話なら耳に挟んだことがある。ヒーロー科に落ちた人や、雄英に入りたいがヒーロー科を断念した人が入るところ…みたいにあまりいい噂は聞かない。つまり、皆の憧れのヒーロー科もただ輝かしい立ち位置だけにいるわけではないのだ。光があれば、影がある。雄英だって例外じゃない。影を持つ彼から、どんな言葉が放たれるのだろう。私は彼の言葉をただただ待った。
「……宣戦布告に来た時、あんたの姿がなかったから…だから、もう一度言いに来た…んだが……」
「ん?」
しかし、あまりにも歯切れ悪い言葉を口にすると、心操くんは私の隣に座った。………なんだか拍子抜けだ。私は彼の言いづらそうな顔を見て、笑みを浮かべた。
「ヒーロー科全員に宣戦布告したかったの? 心操くん、大胆だね」
人は見かけによらないものだと、クスクスと笑う私を心操くんは一瞥し、擦り寄ってきたほかの猫を自分の膝の上に乗せた。
「あんたは覚えていないと思うが、俺とあんた、実技試験同じグループだった」