第6章 雄英体育祭
現れたのは、紫色の髪が特徴的な少年だった。彼は雄英の制服に身を包んでいることから、ここの生徒だと容易に想像出来る。私はへらっと笑いかけた。
「こんにちは。ここ、キミの場所だった?」
少年は私の呼びかけに答えず、スタスタと躊躇なくこちらへ歩いてくる。そして、私の前に立つと、ジッと濃いクマがある目で私を見つめた。そのどことなく暗い色で陰っている瞳が私を映し、私は首をかしげた。
「…えっと…どこかでお会いしましたっけ?」
クラスメートでないのはひと目でわかる。…すると…今のターゲットがいるB組の人だろうか?私は再びへらっとした笑みを向ける。しばらくの沈黙の後、やっとその少年は口を開いた。
「あんた…犬猫山夜蝶だろ。ヒーロー科の」
私はニコッと笑いかけ、唸るクロシロの背をそっと撫でた。
「そうだけど…あなたは?」
私の問いに、彼は表情を変えることなく今度は間髪入れず答えた。
「心操人使…普通科だよ」
なるほど。普通科にはターゲットはいないから、完全にノーマークだった。