第6章 雄英体育祭
「…まじか…」
職員室から出た私は、中庭で頭を抱えていた。…最悪だ。確かに、USJ奇襲事件から…私は自分でも同情するくらい大変だった。まず、滞る度に呼び出されるヒーロー側の会議…これはまぁ体調不良を理由にトンズラできた。私は生徒という護られる側という立ち位置のため、特に何も言われず欠席もすんなりと受理された。しかし、問題はヴィラン側の方だ。あちらさんは、成功体である脳無の回収に血眼で、私にどうにかして回収できないかとそれを求めた。私がどれだけ大変な立ち位置にいるのかなんて、あちらさんは知っちゃことじゃない。その件に関しては、お偉いさんたちとかなり揉めたそうで、黒霧さんは胃をキリキリとさせていたのは少し同情する。
「……体育祭……かぁ…」
それがやっと収拾がつき始めたと思えばコレだ。私は大きくため息をついた。足元では、他の猫達と遊んでいたクロシロが、私の足に擦り寄ってくる。
「雄英体育祭って、そんなに大変なのかにゃ?」
呑気なものだ。私は彼を抱き上げ、苦笑いを零した。この自由な気ままな猫が羨ましい。
「有名な話。衰退化した日本がオリンピックの代わりにしてるのが、雄英体育祭。ヒーローを志す者にとって、外せないイベントの1つ。雄英体育祭の結果によっては、スカウト率が違うからね」
掻い摘んで話してあげると、興味なさげに毛ずくろいをするクロシロ。聞いたくせに、こいつは…
「にゃ!? せっかく毛ずくろいしたのに!!」
私はわざと毛並みと逆の方向になるように、クロシロを撫でた。すると、綺麗好きなこいつは、慌てて熱心に毛ずくろいを始める。私はそれを見て笑い、再びため息をついた。
「………私の個性で…どこまでいけるかね…」
ふと、私は視線を感じそちらを向いた。警戒する必要はないことは、ここが雄英って時点で分かっていたが、クロシロが思ったより警戒する声を出した。