第5章 雄英、調査期間
呆れながら作業に戻る先生の後ろ姿を私はちらりと盗み見た。……なぜ急にその名前を…?もしかして……バレた?いや、それだったらそんな回りくどい事せずに私に直接言えばいい話だ。しかし、私との関係性を知っているということは、先生は私があの事件の関係者だということを分かっていて………。
私の中で色々な最悪の可能性が浮かんでは消え、浮かんでは不安にさせる。もしかしてこの場にいることすら罠なのではないか…そんなことを思っていると、
『にゃーん!! 早く帰ろうにゃ』
クロシロが飛び込んで来たのだ。クロシロは書類の束に突っ込み、そのまま書類とともに床に倒れた。
「クロシロ!」
私は慌てて書類をかぎわけ、クロシロを探し回った。………見つけた。どうやら書類類がクッションとなってくれていたようだが、本人は目を回していた。相澤先生が舞う書類や埃を払いながらこちらへと来た。
「おい、無事か………!?」
クロシロに触ろうとしたその手を私は、思わず払い除けてしまった。どくんっと何か恐怖みたいなものが一瞬体を支配したのが分かった。
「………あ………」
私の行動に相澤先生は驚いたように目を開き、私を見た。私はその顔に我に返り、クロシロを慌てて抱きかかえた。
「すみません!! クロシロは目を回しているだけなので大丈夫です。私帰りますね。では!」
私はカバンをひったくって、扉を勢いよく開けた。息がとても苦しかった。