第5章 雄英、調査期間
『にゃー………まったくえらい目にあったにゃ』
「………自業自得でしょ」
クロシロが手を舐めながら、私の腕の中でゴロゴロと喉を鳴らした。辺りは暗く、人の影もない。
『………どうかしたかにゃ?』
妙なところで鋭いクロシロが顔をあげてそう聞いた。
「………んー。相澤先生思った以上に鋭いなと思ってね」
『でも、あの時と同じ性にゃんだからバレるのは承知の上だったんじゃないかにゃ?』
まあね。確かに承知の上だったよ。先生からもそれを利用しなさいって言われたし。でも、承知の上だったのはそこまで。
「狛川 虎太郎の存在を聞いてきたのよ私にね」
これにはクロシロも驚いたようだ。手足をバタバタとさせる。
『にゃ!? にゃんで今頃!? ま……まさか……』
「それは大丈夫。だって、それは私が言わない限り知られないことだもの」
だって、狛川 虎太郎のことは私と先生しか知らないこと。私か先生が口に出さない限り、知られることがないことなのだ。
『にゃぁ。それもそうにゃ。ということは、あいつはカマをかけたということだにゃね』
「………だったらいいんだけど」
『にゃ?』
クロシロはきょとんとした様子で私を見た。私は立ち止まり、前を見た。既に暗くなり始めた辺りはうす暗く、普段通っている道ではないよう。
「大丈夫。問題ないよ。私は私の道を進むまでだから」
『そうだにゃ』
…………そう。今のところは問題は無い。相澤先生が、狛川 虎太郎の肉親などであるとは限らないから。しかし、もしそうであった場合、私はただちに行動に移さなければならないだろう。
……相澤消太を消すという行動に。