第5章 雄英、調査期間
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「……落ち着いたかい?」
そういうと、犬猫山くんははいっと頷いた。
必死で私の手を握りしめ、自分の顔を見せないようにしている彼女は何故か儚く、今にも消えてしまいそうだった。
いつも笑顔な彼女からは想像もできない姿だ。
数分前、担当する授業までまだ時間があるからと、校舎内をブラブラしていたら真っ青な顔の犬猫山君が走っていくのが見えた。私は思わずそのままで声をかけてしまった。彼女があまりにもただ事ではない様子だったからだ。
「…会いたくなかった」
彼女は震える声でそう言った。……誰かと会っていたのか?しかし、詳細を聞くのは野暮だというものだろう。私は黙って彼女が落ち着くのを待った。
「………すみません」
「いやいや。…何かあったら頼るといい」
「………。…わっ!?」
私の言葉に黙る犬猫山くんの頭を力いっぱいわしゃわしゃとした。
「な……なにするんですか!?」
その驚いた顔が初めて見た犬猫山くんの年相応の顔で…私は思わず笑ってしまった。