第5章 雄英、調査期間
落ちる落ちる落ちていく。下は硬い地面。……私死ぬのか。なんか走馬灯のようなものが見えてきたし。………なんか思い出してみれば、うっぺらい人生だったな。両親が死に、絶望し、ヴィラン側に入ったものの復讐もできず。………あーあ。こんなことならもっと人生を楽しめば良かったかも。
「……まだ間に合うんじゃねぇの?」
…………ん?
「犬猫山さん!! 大丈夫?」
緑谷の声でゆっくり目を開けると、ぶすっとした顔の爆豪がいた。どうやら彼が受け止めてくれたようだ。
「………し……死ぬかと思ったぁぁ」
『大丈夫かにゃ!! ごめんよ!! 目つき悪いのお前意外にいい奴にゃ』
『怖いよぉーお母さぁん』
二匹もどうやら無事のよう。ホッとして地面に下ろした。
「…相変わらず木から落ちるの好きだな」
「そんなわけないじゃないかかっちゃん。でも、やっぱり犬猫山さんは変わってないよね。昔と同じ事言ってる」
………なにを言っているんだろうこの人たち。相変わらず?昔と同じ?は?
安堵の表情を浮かべるぼさぼさの髪の緑谷と、ため息をついてこちらを見るツンツン髪の爆豪を交互に見た。………なんかデジャブ?
「……………………ありがと助かったよ爆豪。緑谷も。シロクロも感謝してる」
そしてばっと立ち上がった。
「じゃあ、私この子を母親に届けてくる」
「はぁ!? おい待て!!」
「えっ!? 犬猫山さん!」
頭の中はグルグルしていた。やばいやばいやばい!!今やばかった。まさか……昔の私を知る人がいるなんて思わなかった。
「はぁ……はぁ………はぁ……」
胸を抑えて、しゃがみこむ。いきなり激しい運動をしてしまって苦しいのか、はたまた違うことで苦しいのかは自分でも分からなかった。