第15章 新たな門出と、仮免
「私に手を回して捕まってて下さい」
すっかり従順になった彼が、大人しく私の指示に従う。少し近くでは、嫌な予感がしてた轟とイナサくんは言い合いを始めてしまったことから、私もさっさとここへ戻ってこなければならないことを悟る。だが、炎で風が浮く…風で炎が飛ばされる…そう言い合う2人に私は頭が痛くなる。
「いい加減にして!! そういう場合じゃ…!?」
「夜蝶…!」
轟が焦った声を出す。風で炎が飛ばされて、こちらへと迫ってきたからだ。上からも…下からも私だけならば対処出来た。だが、彼を抱えたままでは、飛んで回避することも相殺することも困難。
「夜蝶ちゃん!」
2人の焦る顔が炎の間からチラつき、私の腕の中の真堂さんが身体を強ばらせる。普通なら全身やけどコースだ。
「き、君っ!?」
私は咄嗟に…翼を真堂さんごと自身に巻き付ける。そして、彼を庇いむき出しの背を炎に向けた。私は炎に耐性がある…といっても風で威力倍増してしまった炎では火傷は避けられないだろう。私は痛みに耐えるために唇を噛み身を瞑ろうとして…止めた。耳に聞こえてきた声が聞き覚えのある声だったからだ。
「今度は君を掴んだ!!」
痛みの代わりに現れた突風…来たなヒーロー…私はついそう答えそうになり、微笑んだ。彼はそんな私に気づかず怒鳴った。いつもの温厚な彼からは想像もつかないほど、強い口調で。
「何をしてんだよ!」