第15章 新たな門出と、仮免
~誰かside~
到着した救護所で、ワシは自分をビルの上から助け出した受験者に最後の駄目出しをしていた。手際は悪くない、救助中の言葉掛けも、笑顔も、彼女は普通よりかはできている方だった。元来、器用な性格なのだということが伝わってきた。だが、それだけでは成り立たない世界だということも事実。私はそう言おうとしていた。しかし、不意に足に痛みを覚える。私もこの道のベテランと呼ばれる年数を稼いできた。やはりそろそろ引退か…そう思っていた時、温かな光が自分を包んだ。
「こ…これは…!!」
「これで外でたくさん遊べるよ。お大事にね」
てっきり動物への擬態の個性だと思っていたので驚きの目を向けると、その受験者はそう言って私の頭を優しく撫でた。そして、救護の人に、
「意識ははっきりしています。ですが、ビルの上にいたので、砂塵などを多く吸い込んでしまっているかもしれません。怪我は右足の捻挫のみ。母親とはぐれてしまっているようで、ご配慮お願いします」
本当は自分は怪我はないという設定だった。だが、彼女はそう言うと、最後に私に微笑んだ。
「もう大丈夫。お母さんもすぐに来る…」
「すぐに行け!! 何秒時間を使っとるんじゃ!!!!!!!!」
「えええ!?」
私は半ば追い出すように、彼女に声をかけた。焦る表情をする彼女に、私は声をかけた。
「だけど……ありがとうヒーロー」
振り返った彼女は少し驚いたような顔をして、そして笑った。
「うん!! 任せて!! ここには敵も災害も来させないから!!」
その言葉にあわせたように、近くで大きな振動が起こった。……まさかとは思うが、ヴィランの存在を感じ取っていたのでは…そう思ってしまうほど。