第15章 新たな門出と、仮免
~誰かside~
「よろしく!お願いしまっス!」
無形の風を操り、空中に浮かべられていたボールが地上目掛けて降り注ぐ。夜蝶ちゃんは自分もそうしようとしていたのか、少し悔しそうな顔をしていた。……その顔も好きだ…そんな思いが自分を占めた。彼女の個性は自分が記憶していたものとは違っていたが、些細な問題だった。上空に舞う彼女はまさに天使のようだったから、そちらに気を取られていた。だが、俺も自分の仕事はこなさなければならなかった。ただ数の暴力によってねじ伏せられた受験者120名の脱落を、実況は他の受験者に教えた…その時だった。
「来たッスね…!!!!」
自分に向けられた好戦的な目線に、自分の口角も上がる。牽制のように自分の周りに炎が囲まれた。だが、俺は目の前の想い人から目を離せないでいた。
「夜蝶ちゃん…好きっス!」
思わず零れる愛の言葉に、こちらに向かってくる彼女はくすりと笑う。呆気にとられたまま脱落させられた受験者たちが彼女を見て、そして惚けた顔をするのが見えた。
「個性が変わったようッスね!! 今の個性も好きッスよ!!!!」
赤い輝きを放つ炎…見るものを惹き付け、上空を舞う姿はまるで不死鳥のよう…。そしてエンデヴァーに似た、圧倒的な力で他者を圧倒する個性。この距離でも俺の言葉が届いたようで、彼女は再度クスクスと笑った。あぁ…本当に綺麗だ…柄にもなく顔に熱が籠るのがわかる。
「俺…あんたのその好戦的な顔から…ずっと目が離せないでいるッス」
想い人は俺の個性が弱まった隙に、ボールを押し当て試験を抜けたようだ。自分が装着したターゲットが光っているように、彼女のそれも発光して音声を発していた。彼女が俺の元に降り立ち、炎を消すと同時に、俺は彼女にそう告白した。目の前にした彼女に、思いが溢れ出して止まらなかった。