第15章 新たな門出と、仮免
さて、どこで戦おうか…と特に何も考えずブラブラしていると、たどり着いたのはビルが建ち並ぶ道路、建物に囲まれた市街地ゾーンだった。
「まぁ、障害物多いけど…いっか!!」
障害の多い方が個性を試す絶好の場だし。しっかし、よく出来てるなこれ…。周りをキョロキョロしながら、どうせこれらは壊される運命なんだよな…となんだか職人目線になってしまう。
「きゃーっ!!」
市街地のおおよそ中心…女性の声で試験開始を知らせる音声がスピーカーを通して響き渡った。それとほぼ同時、建物の陰から何人もの影が飛び出して来る。
「雄英高校A組、犬猫山 夜蝶!」
大きな声でわたしの名前を叫び、数えるのが億劫な程の人数が意気揚々とボールを振りかぶっている。私はにやりと笑う……早速来たかっ!!
「はーい!!!!」
私はそう叫びながら、足に力を込めた。雄英は体育祭というイベントにより個性不明のアドバンテージを失っているが、私は違う。
「私、犬猫山 夜蝶…個性、初お披露目!! どうか私の為に脱落してね。有象無象の皆さん」
挑発を混じえて、私はこちらへ投げられる無数のボールを避けるために、思いっきり地面から足を離した。
「な…!? なんだその個性…!!!!」
私は彼らより高い位置でくるりと上空を舞った。身体は灼熱の炎に包まれ、私の背中からは炎の羽が生えていた。
「私の個性」
そして、彼らにボールの雨を降らせようとして……止めた。ぐらりと彼らがいる地面が揺れて、私には少し強い風が頬を撫でた。
「……ふーん」
大きなうねりをともなった風は、空中にボールを巻きあげていく。ボールを手にしていた受験者は残さずボールを奪い取られ、豪風の発生源である──イナサくんを呆然と見上げていた。
「…早速、良い実験体がやってきた」
やっぱり強い人と立ち回らないと、分からないことっててあるよね。