第15章 新たな門出と、仮免
「先着で合格なら…同校同士での潰し合いは無い…むしろ手の内を知った仲でチームアップが勝ち筋…!皆!あまり離れず一かたまりで動こう!」
試験開始まで残りわずか1分。すかさず緑谷が指揮をとってくれるものの、協調性という言葉を母胎に忘れてきたかのような男、爆豪くんが従う訳もなくさっさと背を向けて走っていってしまう。
「おい、夜蝶!! てめぇは俺がぶっ殺す!!!!」
「いやいや!! 殺したらヒーロー失格だし……聞いてかっちゃん!? おーい、聞いて勝己っ!!」
まだ先程のことを根に持っているのか…爆豪は私をガン無視して、切島くんと上鳴くんを連れて去る。
「…まぁ、団体行動できるかは個性次第だよね」
少し落ち込む様子の緑谷にそう言うと、私も単体で行動をすると告げようとした。だが、その前に轟が私の腕を掴む。
「…そういう事だ」
そして、私と共にどこかへ走っていった。私は皆にごめんと告げる。
「ごめん緑谷くん。私、皆を巻き込んじゃうと思うから…!!みんながんばろうね!」
しばらく走り、私の手を握ったまま動きを止める轟。私はその背に声をかける。
「……という事で、轟も頑張ろ…」
「お前も轟だろ」
なにやらぶすくれている轟。私は彼の顔を覗き込む。少し考えて、先程爆豪のことを下の名前呼びした事が気にくわいといった様子だった。まったく、この自称兄は…仮免のことを考えなよ…。そうは思うが、ぶすくれたままの彼の頭を私は力いっぱい撫でた。
「そうでした。仮免、頑張ろうね、焦凍お兄ちゃん」
「……おう。頑張ろうな夜蝶」
やれやれ、世話のやける兄貴だ。