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私の敵はヒーロー

第15章 新たな門出と、仮免



「……必殺技…ねぇ…」

私はクロシロを遊ばせながら、今日あった授業を思い出した。まだ、私の個性のことは先生たち以外には伝えていなかった。

「んー…どうしよっか…クロシロ…」

普段からの癖で彼に呼びかけるが、案の定彼からはにゃーとしか返ってこない。……あの憎まれ口が聞けないのは少し寂しいな…。さほう感傷に浸っていた時だった。

「おい、そこの今話題のA組」

と、その声はと振り返ると、久しぶりに見る心操くんだった。私はにこっと笑いかけた。

「元気だった?」

「おかげさまで。そっちは大変そうだったな。またヴィランの人質になってたんだって? もうお前、ヒーロー科じゃなくてヒロイン科にでも転科すれば?」

そうすればA組の空きが出るから助かるという心操くんの軽口に対し、そんな科ないでしょと返しながら、私は久しぶりの彼とのやり取りに楽しんでいた。

「…でも、元気そうで安心した」

私の膝に猫缶とカフェオレの入った袋を置き、彼はそう言った。どうやら心配をかけてしまったようだ。私は彼に礼を言った。

「……クロシロの好きなご飯だ。相変わらず、よく人を見てるなぁ」

本当、敵に回したくないよ…そう言うと、心操くんがきゅっと唇を噛んだ。

「……覚えてるか…ここで話した時のこと…」

「……うん。確か、出会って早々悪口言われた気がする」

茶化すように笑ったが、彼の顔を見てそれは引っ込んだ。彼は今にも泣きそうに顔を歪ませていたからだ。

「…………辞めるなよ」

そして、意を決したように、彼は口を開いた。

「………え…」

「聞いたよ…個性が使えないって…。嘘だと思ってたけど…さっきのあんたの姿見て本当なんだって思った。あんた、クロシロが何て言ってるのかすら分かってないだろ…」

そうか…もう噂として伝わっているのか…。B組の彼が知っているのならば、A組の皆が知らないわけが無い。………どうやら気を遣わせてしまったみたいだ。

「だけど、あんたならまた個性を使えるようになる。諦めんな!! 約束しただろ…俺とあんた…必ずヒーローになるって…!!」
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