第15章 新たな門出と、仮免
「……梅雨ちゃんの性格だったら、あの5人を止めるよねぇ」
予定より早く終わった荷解きに、自分に労いの言葉をかけ、私はそう呟いた。ご飯を食べ終わったクロシロが、んーっと背伸びをした。
「まぁ、クラスのお姉さん的な存在だからね。彼女なりに思うところもあるんでしょ」
さて、と。女子組で決めた待ち合わせ時間まで結構ある。私がクロシロを抱きしめると、彼はにゃーとひとつ鳴いた。
「………その姿でお話ができないのは辛いなぁ…」
整えたばかりの寝具に倒れ込み、そう呟く。まったく、先生はいつも突然なのだ。それにいつも私は振り回される。振り回されていた理由は、簡単だ…先生が強者だから。だが、そんな先生も今や刑務所の中…新たな後継者…死柄木弔に全てを託して。
「もっと強くなりたいなあ」
まだだ…全然足りない。私の個性が戻った…この個性は使い方次第では悪にもなれるし、善にもなれる。勿論、私はヒーロー側としてこの個性を使う気はさらさらない。
「……八木さんもやっぱりあちら側だったな。しかも、平和の象徴だし…ねぇ、クロシロ…私…」
しかし、私はその続きの言葉が見つからなかった。私は今更彼に弱音を吐けるとでも思っているのか…?
「にゃ?」
「なんでもなーい!! 私もお腹張ったなぁ」
私はヴィラン。ヒーローとは相容れない存在。そんな私だったが、先生がいなくなった今…指標を失い、少なからず動揺していたのだった。