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私の敵はヒーロー

第14章 その後·····


意識が戻ったと連絡が行ったのか、警察の事情聴取が真っ先に始まった。

「夜蝶!」

警察が病室から立ち去るか否かという時、ドタドタと慌ただしく入ってきた轟。看護師さんの静止も聞かない彼に、姉の轟冬美は申し訳なさそうにする。家から走ってきたのかと思うくらい、彼は汗びっしょりだった。勢いよく抱きすくめられ身動きがとれず、また警察の人の視線やら看護師さんの呆れたような視線やらでいたたまれない気分だ。

「と、轟…怪我してないし平気だって……」
「お前がまたいなくなっちまうんじゃねぇかと思った」

轟はそう言うと、さらに強く私を抱きしめた。私はふと連れ去られる直前の彼を思い出す。……私の名前を必死で呼んでくれる人、そう言えば両親以来だな。なんて思いながら、私は彼に最後の言葉を告げたつもりだった。

「…またって…私そんな家出少女じゃないよ」

私は茶化しながら彼の背をポンポンっと叩くと、轟は少し落ち着いたように私の首に擦り寄る。少し擽ったかったが、不思議と不快感はなかった。…前から何かに似ていると思っていたが、轟は猫に似ているんだな。

「…1度目はお前を施設に迎えに行く時だ。あの時もお前はどこかへ行ってしまった」

彼の言葉に私は少し笑ってしまい、彼の背を再び軽く撫でる。随分、昔のことを掘り出すものだ。

「……今度は守る」

その言葉に私は迷った。既に先生から撤退命令が出ている。私が雄英にいる意味が無い。つまり、本当ならヴィランから受けた傷を理由に雄英を辞めなければならない。が、その命令を出した先生は今や刑務所の中だ。

「…馬鹿なこと言わないで轟。私もヒーローだよ。守られる存在じゃない」

私の言葉に反応する轟。体を起こし、私と正面から向き合う。

「だから、もうこんなことにはならないよ。貴方も守れるようなヒーローになる。大事な…お兄ちゃんだし……ぐえっ!?」

ここぞとばかりのキメ顔も意味がなく、私は思い切っきり轟の胸に頭を押し込められた。轟の精一杯の力により首が折れるかと思った。た…助けて…

「焦凍ったら、照れちゃって。おかえりなさい、夜蝶ちゃん」

…なんとも不器用な照れ隠しだ。私はため息をつきたくなったが、これで私の住処は確保出来たので良しとしよう。私は轟の胸から顔を出し、ニコッと微笑んだ。

「…ただいま戻りました。…お姉ちゃん」
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