第14章 その後·····
「……あ、起きた」
目を覚ました私が最初に見たのは、懐かしい顔だった。しかし、私が記憶していた顔より大分大人っぽくなっていた。
「……虎太郎…」
私が久々に彼の名を呼ぶと、ニコッと笑みを浮かべる。……笑顔は昔と変わっていない。
「本当、お前が意識がない間色々大変だったんだぜ? 脳無は全部あちらさんに回収されるし、黒霧と死柄木の奴を手引きしなきゃならないしでで…あ、でも先生はオールマイトにやられて刑務所に入っちまったな」
私は彼の言葉を聞いて、やはりか…と窓の外を見た。外は雲ひとつない晴天だ。先生のあの様子からこの状況を読めていたのだろう。…後継者である死柄木にあとは全て任せる…そういったところか…。私は虎太郎に視線を戻した。スカジャンにジーパンと今時の格好だ。
「……その姿…個性を返してもらったのね」
「ああ。こき使わせるためにな。相変わらず、人使いの荒い連中だぜ」
虎太郎は私の髪をそっと撫で、安堵したように笑った。……この子には昔から、心配をかけすぎてしまうな。
「……まっ、怪我は大したことがなくてよかったぜ。流石の俺も合宿まで付いて行けなかったからな」
「……その間、ちゃんとご飯食べてた?」
「ああ。あの姉ちゃんが食わせてくれたからな」
私の言葉にニカッと笑う虎太郎。そして、窓を開けると、外から冷えた風が入る。
「あ、明日には退院できるってさ。今日はゆっくり休めな」
「…分かってる。面倒かけたね」
今更なにを、と虎太郎は笑う。そして、窓の縁に足をかける。ここは1階の病室ではない。しかし私は、別段止めもせず彼を見送る。