第14章 その後·····
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「……後悔しているの? 私と一緒になったこと」
母がぎゅっと父の服を掴むと、父は慌てて首を振った。母はキッと父を睨んだ。
「なら、そんな事言わないで!! 私は後悔していないもの。貴方と夜蝶が私の幸せなの。今更、連れ戻されてたまるものですか!! 」
父の胸をドンっと力強く叩く母。拗ねたように頬を膨らませる母はまるで少女のようだった。父はイテテ…と困った顔をしながら、彼女を抱きしめる。
「…うん。やっと君らしくなった。僕も同じだよ。君たちを手放したくない。君とあの子は僕の幸せだ」
その言葉に母が頬を染めて、安堵したように微笑む。そして、母は父の頬をつねった。
「……当たり前よ。貴方が何を気にしているのか分からないけど、あの子は貴方の子よ。兄の子じゃないわ」
「うっ…」
父は図星をつかれたような反応を示し、母は呆れたように再び父の頬を伸ばす。
「だ、だって…お兄さんと君の個性があれだけ濃く出ているのに、僕の個性だけ出てないし……」
「忘れているようだけど、あの子のあの姿は貴方のお父様の個性よ。貴方の血もはっきり受け継がれてるわ!!」
私は怖かったことも忘れてクスクスと笑ってしまった。余程私に自分の個性が見られないことがショックだったのか、父は項垂れてしまったからだ。私は姿を現し、父に抱きつきた。母も父も驚いていたが、すぐに私を抱き締め返してくれた。
「ごめんよ、夜蝶。起こしてしまったかい? 」
明らかに無理に笑みを作る父の耳に、私は笑いながら口を近づけた。母も知っているので呆れたように笑う。私の個性が発覚した理由…それは怪我をした二匹の猫を助けようとしたからなのに。