第14章 その後·····
――
私の個性が動物を操るものではないと知ったのは、あの事件の少し前のことだった。
「…夜蝶…あなた…」
母は私の姿を見て息を呑んだ。父は私の姿を見て、初めは驚愕していたがすぐに笑みを浮かべた。その笑みはどこかそうなることがわかっていたかのような笑みだった。
「…やっぱり、夜蝶はお母さんの血を1番濃く引き継いでいるんだなぁ」
そして、嬉しそうに元の姿に戻った私の額にキスをした。喜んでくれると思っていた私は両親の反応に戸惑い、不安げに父に抱っこを迫ったのを覚えている。
「夜蝶は綺麗な火を出すんだね。お母さん似だ」
母の個性は火を出す個性だった。しかし、エンデヴァーのような強い火ではなく、精々灯すくらいのものだったが。
「貴方のお父様が確か…動物に変化する個性だったわね。夜蝶は隔世遺伝で現れた個性ってことかしらね」
次の休みにでも役所に行かなきゃね、と母が父に抱かれた私の頭をそっと撫でる。私はその母の笑みを見て、やっと安堵して彼女にも抱っこをせがむのだった。
しかし、その夜。私は知ってしまった。泣きそうになりながら、父の胸に顔を埋めている母を。
「………やっぱりあの子と引き離される運命なのかしら…」
「…そんなことないさ」
父が母の頭を優しく撫でる。母は強く首を振る。
「あの子の個性を見たでしょ? あの炎はまるで…兄の幼少期を見てるようだったわ。あの家の人達は、私たちからあの子を引き離そうとするでしょうね…。あの子が生まれて、散々遣いがあの子の個性を探っていたのを貴方も知っているでしょう!!」
こんなに取り乱す母の姿を私は初めて見て、母の言葉に怖くてたまらなかったのを覚えている。父は相変わらず優しい声色で彼女の背を撫でる。
「それは君のことが心配だったからだよ。本当は、堂々と君にもあの子にも会いたいはずなのに……僕がそれを奪ってしまったから……」