第4章 人命救助訓練とヴィラン連合
「始める前に、小言を一つ……二つ……三つ」
……増えてるし。
「四つ」
ガクッとなった。まだあるのか!!しかし、小言は四つで増えるのをやめ、プロヒーローである13号は話し始めた。
「僕の個性はブラックホール。何でも吸い込んで塵にしてしまいます」
ここで、オタクの緑谷が口を挟んだ。
「その個性で救助するんですよね!」
お茶子ちゃんが何度も頷く。どうやらファンのようだ。
「ええ。……ですが、僕の個性は人を簡単に殺します。みなさんの中にもそういう個性の人はいるでしょう」
そう言うと、表情が一変する生徒達。13号は構わず話を続けた。
「────この授業で、人命のためにどう個性を使っていくのか学んでいきましょう。君たちの個性は傷つけるものではない。守るためにあるのだと心得て帰ってくださいな」
ふと隣を見ると、緑谷は目をキラキラとさせ、13号を見ていたし、他の生徒達のめもまたそのようだった。そんな中、私は1人だけ笑いを堪えるのに必死だった。
守るため?プロのヒーローがそんなくだらないことを言うって!!確か…彼は災害救助のヒーローや紳士的なヒーローだと言われていたな。だからそんな綺麗事を言えるのか。
個性を個々が持っている限り、人自体が消えない限り、何も変わりはしないのに。
地獄を見たことがない、裕福なお坊ちゃんなわけだ。幸せで、幸せな、世の中の絶望も知らずに育った。羨ましい…羨ましいよ。正義の面を被ったその顔で、いけしゃあしゃあと理想論を掲げることが。
私はね先生。あなたみたいな綺麗事をほざく偽善者が1番嫌いなんですよ。
なーんて、私がこんなふうに思っているって、ここにいる誰1人考えてもいない。そりゃそうだ。私と彼らは違うのだから。彼らは綺麗で真っ白なところにいて、私は汚くて赤が耐えないところ。絶対的な天と地の差。だけど……
だけど、彼らならきっとここにいる誰よりも絶望しきった目で言うだろう。私と同じ絶望を味わい、ヒーローを憎悪する彼らなら、私の考えに賛同してくれるだろう。そう、彼らなら。
そのとき、黒い見慣れた影が現れた。何人かが興味深そうにそれを見、私は笑う。
「動くな!!」
相澤先生が戦闘態勢に入った。流石。どんなに経験を詰んだ熟練でも、そんなに急に反応することはできないだろう。
「あれはヴィランだ!」
さぁ、祭りが始まる。