第12章 楽しい楽しい林間合宿
~別side~
「A組B組総員──プロヒーローイレイザーヘッドの名に於いて!戦闘を許可する!」
頭の中に響く声。俺はふと、この緊急事態に必ず人質となる妹の顔が頭を過ぎった。…嫌な予感が拭えねぇ。
「ヴィランの狙いの一つ判明!生徒の「かっちゃん」と「夜蝶ちゃん」!その二人はなるべく戦闘を避けて!単独では動かないこと!わかった!?「かっちゃん」!「夜蝶ちゃん」!」
俺はそのテレパスで、この予感が当たったことを知る。できれば外れてほしかったその予想の名に、焦燥感が自分の中に現れるのを感じる。しかし今は目前のヴィランと、同じく敵の狙いである爆豪が先決だ。
「不用意に突っ込むんじゃねぇ、聞こえてたか!?おまえ、狙われてるってよ」
「かっちゃかっちゃうるっせんだよ頭ン中でえ…! クソデクがなんかしたなオイ、戦えつったり戦うなっつったりよお〜〜〜〜〜〜ああ!?」
気が狂った奴かと思えば、見かけによらず巧みな攻撃を仕掛けてくるヴィラン。それに対して爆豪の苛立ちが募っているのが、端から見ていても分かった。爆豪が舌打ちをする。
「あいつもあいつで、まぁたヴィランに狙われやがって!! クソ夜蝶が!!」
確かに、あいつは最初の頃からヴィランに狙われてたな。そういう個性を持ってんのか?だが、それよりも気になることが俺にはあった。
「爆豪。人の妹をクソ呼ばわりすな。あと、下の名前もなしだ」
すかさず訂正する俺に、何度も舌打ちする爆豪。
「俺があいつをなんと呼ぼうが、シスコン野郎に関係ねぇだろぉが!! あいつの名前が出て焦ってるくせに、俺に構ってんじゃねぇぞクソが!!」
ふと、試験前にあいつの帰りが遅かったあの出来事を思い出す。暗くなってきたので、姉に言われるがまま俺が迎えに行くと、そこには爆豪と一緒の夜蝶の姿があった。その時の爆豪の顔…あの時、あいつはなにを思っていたのだろうか…。
「…爆豪」
「あぁ!?」
「…夜蝶はやらねぇからな」
俺の言葉に、爆豪が口をパクパクさせ、そして怒鳴り声をあげる。
「ふざけんじゃねぇ!! 誰があんなクソブス貰うか!!!!!!」