第12章 楽しい楽しい林間合宿
大きな爆発音が後ろでし、粉塵があたりを漂う。
「うえっ!! ぺっぺっ!! 砂が入った…このクソガキ、ぶっ殺してやる!! だが、いい手だ!! 2対1に対して、そうやって冷静に逃げられるとは将来が楽しみだぜ」
さっきからうるさいこいつは、確かヴィラン名、トゥワイス。本名は分倍河原仁。個性は一つのものを二つに増やす、2倍。こっちは大したことはないと判断できる。精神に不安を抱えているらしく、マスクを取れば1発と聞く。隙も多い。だが、問題は……
「トゥワイス、捕らえるぞ。無傷で、だ」
粉塵の中でも、ちらりと見える青い炎。荼毘。本名も個性も不明の謎多き人物。紹介してきたブローカもろくに知らなかった。私は舌打ちをする。訳分からんやつを引き入れるなっての!!
「警戒しないでくれ。傷つける気はない」
粉塵の中から手が伸びて、私の手を掴もうとする。私は反射的にその手を払った。
「……? 俺の個性をきにしているのか?」
私がそれがあまり良くない行動だと気づいていたが、腕が燃やされるよりはいいだろう。私は無言で走り抜けた。
「まぁ、いいや」
ガクン…気づけば私の膝は地面に付いていた。…なんだ…なにをされた…。私はハッと口を抑えた。
「あまり粉塵をたてるもんじゃねぇぜ。ガスが蔓延してるのに気づくのが遅れる」
ポンっと肩に手を置かれ、私は地面に手をついた。頭がグルグルと回る。粉塵がはれると、荼毘はガスマスクを付けているのが分かった。
「きついか? すまねぇな。大人しく捕まってくれる玉じゃねぇことは、自分でも分かってんだろ。俺はお前を傷つけたくねぇ」
ガスを吸わせた奴が…何を言って……意識が薄れていく中、荼毘が私の体を持ち上げるのが分かった。
「お前はヒーロー殺しが認めた、大事な後継者だからな」
誰だよ…チクったやつ…。しかも、1番面倒な奴に出回ってしまったものだ。
「だから…私は…違……」
私はそいつの胸を最後の抵抗とばかりにと叩く。
「…今はゆっくり寝るといい。俺らを導くヒーローの卵」
私に向けられたその声は、まるで子供をあやすような声音だった。額にカサついた…しかし柔らかい何かの感触がし、私は完全に意識を手放した。…また…このパターンか…よ…