第12章 楽しい楽しい林間合宿
「ごめん…犬猫山さん」
拳が振り下ろされる直前、私と敵の間に入り込んだひとつの影。敵の本気の攻撃を受け止め、痛みからその目からは涙が零れている。それでも…それでも、その影は叫んだ。唇に弧を描いて……
「僕が来た!!!!」
ミシミシという腕…直接その攻撃を受けていないのに、力と力がぶつかる爆風に思わず顔を顰める。正直、めちゃめちゃ痛そう。
「まだ立ち上がってくんのかよ!!!! そろそろ血ぃ見せろやぁぁ!!」
地面が揺れ、足場が不安定になる。…この崖にこれ以上の衝撃に耐えきれるだろうか…。私は指を2回鳴らした。地面に埋め込んだセイマーが上がってくる。私はそれとは別に数体のセイマーを緑谷たちへとやる。
「あ? なんだこの魚類!?」
まだ余裕の表情の敵に私は微笑みながら距離を取る。数体を2つに分け、ひとつを緑谷の腕や体を包み込む。そして…もうひとつは……
「緑谷くん。これで貸し借りなしね」
彼の最大限を引き出すために、彼の個性を吸い取ったセイマーたちが、さらに彼の体を包み込んだ。