第12章 楽しい楽しい林間合宿
そして、私があの場から去って20分後。見計らったように、ヴィランたちが襲撃する様子を私は上から高みの見物に決め込んでいた。
「あ、始まりましたね」
「そのようですね」
遠くで誰かの叫び声がし、私は笑った。
「大方、『万全を期したハズじゃあ…!! 何で……!! なんでヴィランがここにいるんだよォォ!!』って、峯田あたりが叫んでいるのでしょうがね」
「…私ではその声真似が、似ているかどうか判別がつきませんが…。まぁ、貴方が言うのだあればそうなのでしょう」
私が崖の縁に座ると、黒霧さんが真後ろに立った。傍から見れば、私を突き落とそうとしているように見えるので、やめて欲しい。
「どうかされました?」
私は彼の膝をがっちりと掴んで上を向いた。嫌がるかと思ったが、彼は別段気にしてなさそうに口を開いた。
「…あまりにも仲良くされていたので…情でもわいたのではと思ったのですが…」
やっぱり私を監視してたか。私があの連中の気配に気づいて連絡するのも、もしかしたらこの人の計算だったのかもしれない。だが、私は顔には出さず、黒霧さんの言葉に私は大いに笑った。黒霧さんが引くほどに。
「あんなの、演技に決まっているでしょう!! なぁーに信じちゃってるんですか?」
「……」
「私はヴィラン。貴方方と同じ分類ですよ。陽の光を浴びるより、影を選んだんです。今更、太陽の下になんて戻れませんし、戻りたくもない」
笑う私の顔をそっと黒霧さんが触る。見かけは煙のくせに、体温は人肌並みにあるから見た目とのギャップがありすぎて、気持ち悪いったらありゃしない。
「私が雄英に潜入して、あなたが何を心配していたのか知りませんけどね」
「……気づいていたのですか?」
「当たり前です。普段、あなたは人に当たるような人じゃないでしょ。あんなあからさまに当たられちゃ嫌でもわかります」
私の言葉に表情は読みづらいものの、黒霧さんはそうですか…と呟く。
「まっ、単純に私が嫌いだということでしたら分かりますが……」
「それはないです」
キッパリという黒霧さんに、私は満面の笑を零したのだった。