第12章 楽しい楽しい林間合宿
「あれ?緑谷くん、どこへ行くの?」
既に食べ終わっていた私がのんびりと足を伸ばしていると、緑谷がカレーをもってどこかへ行く姿が目に捉えた。
「あ…ちょっとね。洸太くん、お腹減ってるだろうと思ってさ」
なるほど…。だが、緑谷だけでは彼も素直には食べてくれないだろう。私は立ち上がった。
「じゃあ、私もついて行くよ」
「えっ!! う、うん!!」
何故か、ワタワタする緑谷をふふっと笑い、私は緑谷の後ろをついて行った。
「なんで、ヒーローなんかになりたいんだ?」
洸太くんがいたのは、見晴らしのいい崖の上だった。…こんなところで一人でいるのは危ないよ…そう言おうとした矢先に振られた話だった。
「なんで…って…」
緑谷が困惑したように私を見た。その様子だと、緑谷は知っているようだった。この子が私と同じ境遇だということを。…しっかし、相澤先生といいこの子といい、なんで私に話題をふるかね。1番答えづらい質問なのに、2度も聞かれるなんてさ。
「個性をひけらかしちゃって、馬鹿じゃねぇの!!!! ヒーローとかヴィランとか…そんなん…馬鹿みてぇ…」
ええ、それは私も思います。私は緑谷をちらっと見て、彼も私を見た。私は口を開かなかったため、緑谷が何か言ったが、それは彼の心を揺らぐような言葉ではなかった。むしろ、彼の心を固くしてしまった方に近い。私は崖にもたれかかって座った。
「まっ、カレー食べましょ。そして、食べたら戻ろう。……いくら秘密基地だからって、夜にこんなところ…ヴィランに遭遇してもしなくても危ないよ」