第11章 演習試験
不思議と高揚感はなかった。これじゃあまだ、ヒーロー殺しと対面した時の方が気分は高ぶっていたように思う。クロシロを見ると、子供たちと猫じゃらしで遊んでいたため、私は腰を下ろした。
「……平和だなぁ」
ゆったりと流れる時間に私はそう思った。これじゃあ、先生に平和ボケしていると言われてしまうのも分かる。
「……なんで…こう…皆人の古傷抉るような真似してくるかねぇ」
私は頬杖をつきながら、独り言を漏らした。先程のクロシロの言葉が頭をよぎる。「やりすきだ」と、陰から見ていた彼がそういうのだ。ならば、相澤先生たちもそう思うだろう。私はため息をついた。イナズマは回復後、逃げるように雄英を去ったという。これであいつも、もうヒーローを続けていくことは出来ないだろう。思わず笑みがこぼれる。ヒーローが蔓延る社会で、ヒーローを無くす、それが私の思想だった。…まずは記念すべき、第1歩というところか。
「でも、気分は晴れないんだよなぁ」
…まぁ、これは先生と久々に話したからだろうが。私は再びはぁっとため息を吐いた。レジ袋の中身をちらっと見る。そこには、黒霧さんからの報告が記された紙が入っていた。