第11章 演習試験
私はゆっくりと足を進めた。焦げ臭い匂いが鼻を刺激する。周りはまるで雷が落ちた後のように、黒焦げの状態だった。これは後片付けが大変だろう。
「報告だよ。条件達成最初の子は、犬猫山夜蝶」
ゴールの門をくぐった途端、流れる放送。リカバリーガールの声か。
「…こんなのあるんだ」
私は背伸びをして、リカバリーガールの所へ行こうとした。しかし、
「ま……て…!!」
後ろから呼び止められ、私はああ…と思い出したように振り向いた。焼け焦げた草むらの真ん中に男が倒れていた。
「な…なにを…した!! こんなの…反則だ…」
なにを言っているのだろう?私はこてんっと首を傾げた。
「私の個性があらかたバレちゃってますし、それならばその個性を身に纏うということは想像できます」
開始早々、攻撃を仕掛けてきた私にこのヒーローは自分の個性である雷を見に纏わせた。そうすることで、絶えず周りに電気の流れができ、私の個性を使わせないようにするためだ。男の顔が引きつった。
「ですから、私はそれを逆手にとって、個性を最小限に留めました。私が作ったセイマーたちは体育祭で反則だという声がありましたので、今回は使用しないと決めていましたよ。使いませんでしたよね?」
私は男に近づき、焦げた右手を見せた。プスプスといっているそれは、炭水化物が焼けた匂いがした。男の顔が強ばる。