第11章 演習試験
私は大きく息を吐いた。…死柄木だけ気にしてればいいのに、という言葉を飲み込んで。どういう手を使ったのかは分からないが、先生は私を教育したいのだと感じ取った。
「最近の君が、少し平和ボケしていると聞いてね。ヒーロー殺しと対面したそうじゃないか」
軽い調子で言う先生。だが、私は冷や汗が止まらなかった。息を吸う回数が多くなる。
「私は君にそのように教育した覚えはないがね」
冷水を浴びせられたような気分だった。胃の底からムカムカする。最低の気分だ。これならまだ、死柄木の方がマシだ。私はギリギリの崖の上にいるかのような心地になり、思わず胸を抑えた。
「自分より格上の相手がいた場合、私は逃げさないと教えたはずだ。そして、その相手を完封なく叩き潰せるように道具を駆使しなさいと」
無駄な時間は極力削るものだよ、そう先生は言う。私はカラカラの口の中を少しでもマシにしようと唾を飲み込んだ。…あまり効果はなかったが。
「…まぁ、終わったことはもういいさ。大切なのは、君が私を理解しているということを証明して欲しい。分かるね?」
気づけば、私は唇を噛んでいた。体全体が震え、歯がガチガチと鳴る。
「あの男を君なりに殺しなさい。君の思想を体現するんだ」
それは私が初めて言い下された殺しの依頼だった。