第11章 演習試験
迷ってしまった先が運がいいのか悪いのか…見覚えのあるポスターがそこら中に貼られていた。それは、私を助けたヒーローの顔があり、そこにはそのヒーローがあの事件の功労者とでかでかと書いてあった。
「…ビリビリヒーロー…イナズマ?」
彼のポスターには、私を助けた経緯が書かれていたが、私にはそれが嘘のように思われた。
「だって……だって、あなたはすぐに助けに来てくれなかったじゃない」
窓の外から眺めたとき、何人もヒーローがいた。その中にあった顔には見覚えがあった。
「………個性と相性が悪い…だから見てるだけ……じゃあ、ヒーローってなに…」
ヒーローってもっとカッコイイものじゃないの?あの幼なじみ2人が憧れたヒーローって…こんなものなの?
「……壊してやる…」
ドスンと心に鉄の塊が落ち、私は唇を噛み締めた。目の前には往来の人に手を振るあのヒーローの姿が。私たちを食い物にし、笑っているヒーロー。目の前のポスターはとうに破れ、私はポスターの残骸を地面に落とした。
「ヒーローなんてこの世から消してやる。個性なんて持っているから、そんな妄想が生まれるんだ。ヒーローとしてのお前の存在全てを否定してやる」
こうして、ヴィランとしての私は生まれた。なんとまぁ、馬鹿なことを願ったものだと思う。ヒーローが蔓延るこの社会で、あろうことかヒーローを消してしまいたいと思ってしまったのだから。