第11章 演習試験
先生は初めから、私のことを知っていたようだった。
「犬猫山夜蝶だね。初めまして」
綺麗な身なりをした、嫌な感じの男。それが私が先生に抱いた第一印象だった。綺麗な服を着ているくせに…何よりも黒くて汚いものを腹に抱えているような…そんな感じ。それになんと言っても、彼の後ろに隠れるように立つ少年。彼の目が…あの男と重なり、私は息を飲んだ。
「あぁ。この子は死柄木弔。この子もまだここに来たばかりでね。仲良くしてあげて欲しい」
やせ細った枯葉のような少年。しかし、その目がギラギラと光ったようなきがした。そして、その目で私を捉えた瞬間、鈍い光は輝きを増したように思えた。
「………!!」
当然、私は逃げ出した。そこがどこかも分からなかったが、必死で逃げた。途中で個性を使って、高い塀を飛び越え、私は息を荒らげながら、最後に後ろを振り返った。
「………っ!!」
そこには、数名の大人に混じって、あの少年がいた。今度は先生の後ろには隠れておらず、2つの目で私を見て、そして口を開けた。
「次は殺す」
と。私は訳の分からない恐怖が心を縛り、そして塀から降りた。無傷で着地した私は、そのまま全力疾走でその場から立ち去ったのだった。