第11章 演習試験
~誰かside~
俺がそいつをそうかもしれないと思ったきっかけ。それは、伏せた長いまつ毛から見える瞳に、何やら不吉な影が宿った時だった。
ビリビリがいつものように煩く、デクがいつものようにうっとしいと思う、何ら変わらぬ日常。しかし、それがそうだと感じられなくなったのは、1人席に座る女。
「速く…速く見たいなぁ」
そう呟く女は…周りの様子など見もしないで、初めて見るような顔で笑っていた。何を早くみたいのか…。俺は背中に冷や汗が流れた。普通に話せば、普段と変わらない様子の女。だが、明らかに普段より高揚感が感じられた。
「…お前の中で…そんなにも変わることがあったのか?」
ヒーロー殺し。それと対面したのは、うちのクラスでは3人だと表向きではなっている。だが、俺は聞いてしまった。あの場には、最初にこの女がいたのだと。しかも…女は……
「どうしたの?かっちゃん」
俺が足を止めていることに、女は不思議そうに首をかしげた。俺は舌打ちをする。
「…何でもねぇよ!! クソ女!!」
あるわけねぇか。このあほ面をする女が、実はヴィラン側と繋がっている…なんてことは。