第11章 演習試験
「…うん。そうだね、ごめん」
彼の言葉に私が頷くと、彼は大きく舌打ちをし、先ほどより早足で歩き出す。私はそれに追いつこうと慌てて走り出し……そして、目の前の背中が急に止まるのを見て、私も足を緩めた。
「……てめぇ、雄英止めろ。向いてねぇよ」
そう普段の彼からは想像出来ないほど小さな声でそう言った。
「…心配してくれてるの?」
私の言葉を鼻で笑う爆豪。
「どう聞いたらそう聞こえんだ。耳鼻科行け」
「否定しないってことはそういうことなんでしょ?」
幼なじみとしての警告…か。私は微笑んだ。私がヒーローに向いてないことなんて、1番私が分かっている。
「違ぇよ!! ただてめぇがあまりにも弱すぎて………」
爆豪の言葉はそこで止まった。私はおかしくておかしくて…思わず彼に抱きついていた。洗剤の清潔な匂いが鼻をくすぐった。
「ありがとう。私は大丈夫だから」
「……だから、誰もてめぇの心配なんぞしてねぇよ」
くすくすと笑い、私は体を離した。ほんと、何でもかんでもできちゃうくせに、不器用だなぁ。
「……夜蝶」
ふと、爆豪が昔のように私の名を呼ぶ。私は答えた。
「なに?かっちゃん」
「てめぇは……」
爆豪が何を言おうとしていたのか、私は結局分からなかった。私の後ろから呼ぶ声が聞こえたからだ。
「探した。爆豪も一緒か?」
それは、絶賛私を構いたがり中の、轟だった。