第11章 演習試験
職場体験も終了し、日常が戻り始めて来た頃。私は轟邸でゆったりとお茶を飲んでいた。
「はぁ……落ち着く…」
「でしょ? お父さんたちには内緒よ。お客様用のいいお茶だからね。こっちの羊羹も食べて夜蝶ちゃん!!」
このにこやかな女性は、轟冬美、22歳。轟家第二子であり、長女。エンデヴァーとは、一番良好な関係を築いている。持ち前の明るさと子供好きから、小学校の教諭となり、実質この家の母親代わりを請け負っている。
そんな彼女から声をかけられること数十分前。特に何もすることがなかった私は、二つ返事で了承し、そして今…ダラダラと時を過ごしている。私は冬美に進められるがまま、茶菓子を口に放り込んだ。
「んー!! 美味しい!!!!」
「でしょでしょ。もう、お父さんも焦凍も反応が薄いから、食べさせがいがないのよね!!」
彼女の言葉に分かりますと笑いながら、私はお茶を啜る。
「夜蝶ちゃんが来てくれてよかったわ!この家、女1人だったから物足りなくて」
よそ者の私に、そんな言葉をかけてくれる冬美。それは本心のようで、彼女もまた羊羹を口に入れて微笑んだ。私も最後の羊羹を口に入れる。
「美味しい~!!!!」
まぁ、こんな日があってもいいか…そう思えたのだった。