第11章 演習試験
翌日。本日ひさしぶりのA組集合登校日。
武闘派ヒーローへと職場体験に行った、お茶子ちゃんが武者修行帰りの猛者に見えたり、爆豪の髪型が吹き出すような仕上がりになっていたりと、クラス内は賑やかに包まれた。
そんな中、やはり話題となったヒーロー殺しの件。素直な上鳴がテレビで見たという内容を話し出す。
「でもさあ、確かに怖えけどさ、尾白動画見た?アレ見ると一本気っつーか、執念っつーか、かっこよくね?とか思っちゃわね?」
「上鳴くん…!!」
緑谷の声で、ようやく失言に気付いた上鳴。飯田を見て彼に謝り、気まずい空気が流れる。そんな中、私は椅子に静かに座った。
上鳴は何も間違ったことを言ってはいない。これが、世間の意見だ。
ヒーロー殺しの思想は、動画サイトで今や削除と投稿のいたちごっこが繰り広げられている。先生は、彼のことをカリスマと呼び、私はただの狂人だと思った。その狂人にあてられた者のなんと多いことか。実際、彼の執念は他者になんらかの化学反応を引き起こし、恐怖、畏怖、そして憧憬を人々に知らしめた。ふぅっと息を吐く。後ろで飯田が何かを言っていたが、なんの興味も沸かなかった。
「速く…速く見たいなぁ…」
この化学反応は、これから何を起こすのか…それだけが今の私の頭を占めていた。思わず笑みが零れ、私は大きく背伸びをするのだった。