第9章 私たちのはちゃめちゃな職場体験
重い圧迫感が私を襲い、空へと連れ去られる。私はしっかりと腕で固定され、緑谷は足で掴まれている。
「え…ちょっ…」
彼は何が起こったか、まだ処理出来ていないようだ。下では皆がみな慌てた表情を見せる。
「脳無!?」
しかも、こいつは私が投げ飛ばした脳無じゃないか!!私は軽く舌打ちをした。攫うなら、緑谷だけにしろっての!! 確かに空中じゃ、緑谷も対処できないと言った。言ったが…私まで攫う必要ない!! しかも、脳無を使うなんて…!!こんな妙なことを考えるのは、あの手首男以外思いつかない。
「うわぁぁぁ!!!!」
やっと状況を理解したらしい緑谷が、叫び声をあげる。どうする…ここで脳無を操ってもいいが…しかし…こんな人目がつく空中では…!!
「……ヒーロー殺し…」
ゾワっとしたものが上から下まで駆け巡り、宙に浮くような感覚がしたかと思うと、気づけばヒーロー殺しの腕の中にいた。片腕には緑谷の姿もある。
「偽物が蔓延るこの社会も、徒に力を振りまく犯罪者も粛清対象だ…」
息が乱れるヒーロー殺しに、私はハッとする。この人…肺に骨が突き刺さっている、と。