第9章 私たちのはちゃめちゃな職場体験
「…全ては正しき社会の為に」
私を抱えたまま、ヒーロー殺しはゆっくりと体制を整える。…それ以上動けば確実に死ぬ。口を開こうとした。しかし、私はその顔を見た時、動けなくなった。
「エンデヴァー…偽物」
今までの非ではないくらいの殺気。間近で受けた私は息をするのも辛かった。死線間近のものの叫びはこんなにも…重いものなのか。ヒーロー殺しは口を開いた。
「正さねば…誰かが血にそまらねば…! ヒーローを取り戻さなければ!! 来い…偽物ども!!」
間違いなく彼は重症であり、もちろんエンデヴァーと戦うどころか、今に倒れてもおかしくないのに…。彼の気迫に、誰も動くことが出来なかった。彼は叫んだ。
「俺を殺していいのは、オールマイトだけだ!!!!!!!!」
ドッと冷や汗が流れ、何人か地に崩れ落ちる音が聞こえた。辺りは静寂に包まれ、私はハッした。
「…救急車!! 早く病院へ!!!! 早くしないと手遅れになる!!!!」
私はすでに意識のないヒーロー殺しを地面に寝かせた。吐血する恐れがあるため、彼を横に寝かせ、窒息しないようにする必要があった。
「気を…失っていたのか…」
私があまり意味が無いと分かっていても、救急車が来るまでに応急処置をしている間、私の腰に回されている彼の腕が解けることはなかった。