第3章 学校生活
「相澤先生、これはここでいいですか?」
私は相澤先生の手伝いで、荷物を資料室の机の上に置いた。
「…ああ」
長い髪に長いマフラー。それらに隠れた瞳に移されるとその対象の個性は消えてしまうという、抹消の個性を持ったヒーローの1人。抹消ヒーロー、イレイザー・ヘッド。彼にやられたヴィランは数しれず。平和の象徴に引き続き注意人物の1人と言える。
「あ、これ相澤先生ですよね!! うわー、顔見事に隠れてる」
私はふと見つけた資料を見せながら、言った。無視されると思っていたが、相澤先生はため息をつきながら答えた。
「……当たり前だ。顔が映っては仕事に支障が出る」
………もう出てるでしょ?口には出さなかったが、私はちらりと先生の後ろ姿を見た。相澤先生は別段気に止めもせず、資料を棚に直す作業をしている。
「あ、そりゃそうですね」
私は笑いながら、その資料のページを見た。既に知っている情報以外、何も収穫はない。
……支障、もう出てるから、こうやって資料整理なんてしているんでしょ?まぁ、私には関係ありませんが。まずは敵の容姿の確認は、基本中の基本。彼がイレイザー・ヘッドだと気づかなかったが、緑谷のおかげで分かった。緑谷のあのオタクぶりは利用できそうだ。
「……犬猫山」
相澤先生が後ろを見ていることをいいことに私が、ニヤニヤとその後ろ姿を見ていると、不意に名前を呼ぶ相澤先生。
「はい?」
「お前は何故、ヒーロー科に入った?」
「ん?」
その問いかけに私は首をかしげた。何故そのような事を聞かれるのか分からない。疑われる要素も心当たりがない。だから私は答えた。
「そんなのヒーローを目指しているからに決まっているじゃないですか。みんなそうですよ」
「……そうか」
………やはりやり辛い。相澤先生の様子を見て私は思った。この先生は直感で動くタイプではないが、豊富な経験から私がほかの生徒と目的が違うことを感じ取っている。あまりコンタクトを取らない方がいいだろう。
「あ、先生ー!!そう言えば私、次の授業の手伝いに、ほかの先生に呼ばれているんでした!!もう戻っても?」
「あぁ」
「では、失礼しまーす!」
私は会話を打ち切り、資料室から出た。相澤消太……頭が切れる担任の先生。これからは慎重に動くし、手も抜くのもほどほどにしなければ。